KING OF HIPPO

去年、生まれて初めて、全身麻酔を伴う手術をした。

前日の午後9時からは絶食、手術2時間前からは水分摂取すら禁止で、それまで制限なしで欲望の赴くままに食べて飲んできた身には少し辛いものがあったけれど、受けておくべき手術であったので耐え抜いた。

点滴も、12年前にクジラ肉にあたって病院に運ばれて以来、人生二度目。
点滴から、胃薬や麻酔、鎮痛剤を全て注入するとのことだった。
トイレに行くのにも、点滴台をガラガラ引っ張って移動し、多くの人が経験済みであろうことを今頃体験し、感慨深い時間を過ごしていた。

点滴をされてしばらくして、名前を呼ばれ、看護師さんに、自分のイビキがすごいことをきちんと入口で伝えてから、手術室に向かう。
大勢のスタッフに出迎えられ、手術台にのぼるた、チップや拘束具をつけられ、いざ麻酔。
老齢の麻酔医による麻酔注入後、何度か名前を呼ばれ、生返事をしているうちに、麻酔医に起こされた。手術は終わっていた。

本当に一瞬で眠るんだという驚きで興奮しつつ、スタッフにストレッチャーに乗せられる。
重いのにすみません、と気の利いたつもりの一言は余計だったなと思い返す。

その後、ベッドに移動し、改めて手術の成功と、使用した麻酔薬がマイケルジャクソンとお揃いなことを教えていただく。
適量を間違えると死ぬんだよ、と笑顔で説明された。
憧れのマイケルジャクソンと同じ薬を使ったという高揚感と、抜け切らない麻酔の効果で、気だるい身体と眠りたくても眠れない1時間を過ごした。

手術室で、麻酔が効いて意識を失う前の最後の言葉は、「イビキがぁ…」だったらしい。

目覚めてよかったなぁ。


かばこ